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第12章の18

すると須藤は混乱してしまったらしく、えーっと、と考え込む。 そこへ、社長が出て行って開けっ放しになっていたドアのところから社長が顔を出し、 「今、包丁で、応戦とか言ってなかったか? 何の話だよ。」 「あ…」 麻也が口ごもると、諒が代わりに、 「そんなの、もう、ずいぶん前の話で…」 「いつごろだよ。」 社長の意外な反応に諒は困りながらも、 「麻也さんは前のバンドの中ごろで、で、俺の方は、真樹たちとバンド組もうかって頃です。」 「えっ? 諒も? 」 みな驚くばかりだった。が社長は 「1回だけ? その後付きまとわれたりはしなかったのか? 」 え…まあ…と2人がお茶をにごそうとするのを社長は許さなかった。 「はっきりしろ! 麻也から! 」 「あの…その女の子の方はそれっきりでしたけど、男の方にはずっとつきまとわれ…」 「麻也さん! 聞いてないよ、男なんて…」 会議室中が騒然となる中、自分の両肩を掴んで離さない諒に麻也は苦笑いして、 「何だよ、忘れたの? 前のアパートの台所で…」 「ああ、俺のこと…」 ほっと胸を撫で下ろす諒にみんなが言葉を失う中、麻也はいたずらっぽい笑顔で諒の顏をのぞき込み、 「諒こそ、その2回以外にあるの? 」 「ありませんとも…なんだ、俺たち最強カップルだったんじゃん♪ 」 みんなががっかりする中でも、やっぱり社長は社長だった。 「最キョウのキョウは<凶暴>の<凶>な。 須藤くん、マネージャーのシフト変えてくれ。」 さらにメンバーに向かっては、 「ダメだってお前ら、もうプロでファンの数多いんだから。 好きすぎてイカレちゃうヤツのパーセンテージも上がってるかもしれないし、 逆恨みもあるかもしれないし。真樹も直人も、気をつけないと。 他人事じゃないぞ。ファンとは呼べないようなヤツも寄ってくるし。」 

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