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第12章の21
それからその日はレコーディング初日だったわけだが、
早く切り上げて、メンバーが二手に分かれてのラジオ出演になった。
次の日にはプロモーションビデオ録りの後、レコーディングで…
その合間に、真樹は急きょ例のティーンズ雑誌の「おにいさま図鑑」の取材に駆り出された。
予定していた俳優がケガをしたので、ピンチヒッターということだったが、
あまりに急だったので、CDの宣伝を多くしていいし、次号は直人が取り上げられる、という好条件がつけられていた。
が、しかし…
「あの…須藤さん、俺は出られないの?… 」
諒がおそるおそる尋ねると、須藤は目を伏せて、
「はあ…」
「何で? 全員そろい踏みの方がカッコいいじゃん…」
すると須藤は、すまなそうに、
「いやあ…諒さんの美しさは刺激が強すぎる、って言われちゃって…」
そう言われた諒はふくれっ面で、
「ウチのファンは10代だって多いんだよ…」
「まあ、強い刺激を求める10代、ですかねえ…」
「何だよそれ…」
「ん、まあ、とにかく俺、行ってくるわ。諒、向こうの担当さんにも訊いてみるから…」
と、真樹は一人で駆け出していった…
よろしくね~と、その背中に声をかけた諒だったが、
「…って、マネージャー不足はそのままじゃん。
お弁当は手作りの店の美味しいのになったけど。」
「ちょっと待って下さいよ。今、他のバンドから引き抜いてきたり、その穴埋めたりで大変なんですから。」
ごめんなさい、と言って諒は、自分よりかなり背の低い、でも父親のような須藤の肩を、ねぎらう意味を込めて、
よれたスーツの上から優しくマッサージした…
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