568 / 1053

第12章の22

 インタビューも順調だったそうで、真樹は思ったより早く帰ってきて、レコーディングに戻ったが… 諒はその時、近所のティールームでインタビューを受けていて、スタジオにはいなかった。 「兄貴、現場でさ、例の件どうなってますか、ってこの人が。」 と、真樹から一枚の名刺を手渡された…と、見たが、麻也にはピンとこなかった。 「…えっ?…誰のマネージャー…? 」 「ほら、あの図鑑で共演した、モデルの希亜良(きあら)ちゃんって人の…」 「ああ、そう言えば、そんな人いたねえ…」 麻也にとってはその程度の認識だ。 「それなりに可愛いのに、一対一の撮影だったのに、それ? 」 と、真樹はあきれながらも、 「あの雑誌で一番人気だって話じゃん。だから、例の件よろしく、って伝言。 それを兄貴がやってくれたら、すぐに諒さんが図鑑に載るように手配しますよ、だって。 どんな話だったの? 人気モデルってそんなに力があるのかねえ。」  そこまで言われて、ようやく麻也は思い出した。  希亜良の兄がインディーズのバンドをやっていて、メジャーにもう一歩というところなので、 ビデオを見て、CDも聞いて、できればライブも見て、気に入ったら口添えしてほしいと言われていたのだ。

ともだちにシェアしよう!