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第12章の24

「なかなかご連絡できなくてすみません。 お詫びにお茶でもごちそうしますので…」 そう言われると、確かに忙しい中、いい機会かもしれないという気がした。 麻也はドラムの調整をしている間に、と思い、鈴木に言い置いて、バッグを持ってスタジオを出た。  入った店はレトロ調の喫茶店で、諒がいるはずの店はさりげなく避けた。  窓際の席でコーヒーを飲みながら、手渡された歌詞を麻也は読んだ。 内容的には特に直すべきところはないように思われた… 「はあ…これでよろしいんじゃないでしょうか…」 口に出してみると、何だか笑えてしまった。向かいの相原も大笑いしていた。 「…いえ、男性の視点からじっくりと見ていただきたかったの…」 と言ってから、おずおずと、 「そう言えば…あの…麻也さんて、その女の人とも…恋愛は… いえ、参考までになんですけど…」 相原の言いたいことはわかったが、麻也はどう答えたものか困ってしまう。 今の諒との関係を考えると、かつての女の子たちとの関係はみな「若気のいたり」という言葉が当てはまって… どれほど浅いものだったか思い知らされて… でも、まさかそれをストレートにいう訳にもいくまい。 更には、相原も実は、よくあるように「諒とは営業用のカップル」と思っているかもしれないし… それで、最近須藤にアドバイスされたように、麻也は答えてみた。

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