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第12章の26の2

相原の言う「おつきあい」とは何を指しているのだろう。 彼女の表情からは読み取れない。が、麻也はどうにか、 「いやー、ないです。何せ、僕は前のバンドでクビにされたヤツですから…」 「あら、でも、今回のことで復活したのかと思ってました。あら、そうなんですか…」 その笑みは何だろう? 坂口がついていなければ、自分に迫りやすいということだろうか。 嫌な気持ちが胸の中で形になってきた麻也は、極上の笑顔を作り、 「申し訳ありません。今日はもうそろそろ戻らないと…」 と言って、テーブルの上の伝票を手に取った。 あらそんな、と形ばかりは止める相原の顏には、デート代を麻也に持ってもらって嬉しい、と書いてあった… スタジオに戻ると、麻也はまずはトイレの鏡に向かい、デオドラントスプレーをしっかりと髪全体に振りかけた。 スプレーは鈴木に買ってきてもらったものだった。 相原の香水はさほど気にならなかったが、さっきの喫茶店の煙草の匂いはきつかったので気になって… 煙草のにおいにはいつも悩まされていたからそれを言ったら、鈴木が買ってきてくれたのだ。 ないよりはマシな感じで、シトラスの香りが広がった。 そこでようやくみんなのいるスペースに戻ったが、諒がそこに帰ってきたのはその30分くらい後で… レコーディングは深夜まで及んだ…

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