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第12章の28

 希亜良のは、袋から出す時に取り落としたのだろうか。  全然気づかなかった…それにしてもどういう文章だ… 「諒っ! 」  麻也は諒を追ってベッドルームに飛び込んだ。 が、麻也と同じように髪が乾ききってない様子の諒は、 外出しようと着替えを始めていた。 「諒っ!… 」 「頭、冷やしてくる。」 目をそらしたまま冷ややかに言い放つと、諒はステンカラーのコートを羽織った。 「ちょっと諒、誤解だよ! 」 麻也が腕を掴もうとするのも振り払って、諒は部屋を出ていく。 「こんな時間に! 風邪ひいちゃうよ! 」 それにも構わず、諒はそそくさと玄関に向かい、麻也はいま一歩で追いつくことができなかった。 「諒っ! 」 さすがにバスローブのまま11月の深夜に、外に出るのは厳しい。 そして…自分が悪いわけじゃないのに、という思いが足を止めた。  それでも、ドアから顔だけは出し、見えなくなった諒の背に向かって叫んだ。 「諒っ! 」 深夜の冷たい空気の中、麻也の声がむなしく響いた…

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