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第12章の29
…とはいうものの、麻也も落ち着いて寝る気になどとてもなれず、
とにかく普段着に着替え、コートも出しておいた。
…諒にいつ「迎えに来て」と電話が来てもいいように…
運転禁止なんて関係ない。我が家のベンツで迎えに行くんだ…
…と、待っているだけではいけないことに気がつき、諒の携帯に電話したが…出てはくれない。
かといって、立ち寄る先は、この遅い時間では見当がつかなかった。
せめて、身内の誰かのところに転がり込み、体を休めてくれればいいのだが…
真樹にさえ、電話するのも気が引ける時間である。
どこかの店で仕方なく朝まで…なんてことになったら悲しすぎる…
だからといって、勢いにまかせて麻也の知らない友達といけない関係になられても許せないが…
何も手につかない麻也は、リビングでその後も何度も諒に電話やメールをしたが、
そのうち電源が切られてしまった。
真樹に電話しようか、と思った頃、直人から短いメールが来た。
―諒、泊めてます。詳しくは明日。
…きっと諒の目を盗んで送ってくれたのだろう。
麻也も「ありがとう。了解」とだけ打って返信した。
少しほっとしたが…諒が帰ってきたら、と思って、リビングで待つことにしたが、
やはり明日もスケジュールはキツいのでソファに横になるのは許してもらおう…
…気がつけば、携帯が鳴っていた。
ディスプレイには<事務所>…出てみると社長だった。
―麻也、早くにごめん。今から社長室に来てくれないか。諒はインタビューに向かわせたから…
電話を切ってから、もう午前中だと気づいた…
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