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第12章の35

 が、しかし、社長は、 「この件は、真樹と直人には俺から最終報告するから、麻也は何も話さないで。 須藤くんたちにも俺から話すから。」 と言うと、一転して困ったような表情になり、 「お前たちはプロ意識が高いし、問題を起こすようなヤツじゃないから言いたくないんだけどさ… 今は大事なレコーディング期間だから、さらに細心の注意を払って…うーん、上手く言えないけど、 諒とモメないでくれよ~」 麻也も泣きたい気持ちだ。 「いやあ、俺も心がけているつもりなんですが…」 「そうだよなあ…そうか、俺が悪いのか。 男女問わずのアタックからお前を守ればいいことなんだよな。早く手を打てばいいんだな。」 腕組みをしてつぶやく社長に、麻也もうなずきながら、渋い顏になっていくのが自分でもわかる。 「わかった。もう、今日からお前には鈴木くんをべったりつける。 真樹には服部くんを、直人には伊藤くんをつける。」 服部というのは、同じ事務所のエレクトロユニットのサブマネージャーで、 伊藤は新人バンドのサブマネージャー。 服部はまだしも、伊藤はこの業界に入ってまだ日が浅いはずだから、麻也は直人のことが気にかかるが… ディスグラが売れているとはいえ、この小さい事務所で新たに2人を募集をすることを決定してくれた、 そこまでしてディスグラを守ってくれようとしている社長にはただただ感謝だった。 「よろしくお願いします。」 と、麻也は深々と頭を下げた。

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