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第12章38

「木内さんは、<自分の知らない人だけど、ロマンスグレーの紳士と、プロストのカウンターでしっぽりと飲んでた>と。 スカウトマンは…」 そこで諒は言葉を詰まらせた。が、 「…その、実名をあげて、その人と飲んだ後、その人のマンションに行ったって…」 「その人、って誰だよ? 」 じれったそうに社長は訊く。 「言わなきゃダメですか? 」 諒は傷ついた表情で尋ね返す。 「ああ、言ってくれ。お前の方が取り越し苦労だって言ってやりたいよ。」 すると諒は冷ややかに笑い、 「…麻也さんは出稼ぎ前からウワサ、多かったし…」 「だからあ、取り越し苦労だって教えてやるっての!  あと、お前の獲得合戦が裏で起こってて、お前の弱点を攻撃するために、 ウワサを流されてるんじゃないの? 」 「いやあ…」 傷つき、疲れ果てた諒は、首を横に振るばかりだった。

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