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第12章の40
「まあそうだけど…相手が社長なので、他のメンバーのためにも、
泣く泣く言うことを聞いていたとか…」
「…だったらヨリなんて戻します? やっぱり、好きって部分が…」
とまで言った諒の大きな瞳は潤み、顏の下半分を両手で覆って…
「…あったんじゃないのかなあ…」
涙がこぼれた。…しかしその目が、次には床に視線を落とし…
…諒は何かに気づいたようだった…
「…まさか…社長…? 」
「…ん? え? 何だ? 」
諒は真っ青になって社長を見つめる。ようやく開いた重い口からは、
「…麻也さんを…今回のタイアップと引き換えに…? 」
「はあ? 」
あまりにバカバカしい考えに、社長は怒りを忘れ、笑ってしまった。
が、すぐに我に返り、
「お前、いくらこの弱小事務所の稼ぎ頭だからって社長の俺をなめるなよ。」
言ったことをすぐに後悔したらしい諒は、うつむいて涙をこらえているようだった。
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