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第12章の45

思ってもみなかった社長の剣幕に諒は目を見張り、絶句するばかりだった。 「…麻也だって生身の人間なんだ。前のバンドでは苦労したようだから、 おかしくなったり、弱くなった面もあったろうよ。 同じように、お前だって何か欠けた部分があるからアーティストなんてものをやってるんだろうさ。 その2人がせっかく純粋に愛し合ってんのに、 それを信じ合えないなんて、もったいないと思わないか? 」 客観的に見ても、麻也が自分を愛しているように見えると言われて、 少し安心した諒の口からは、素直な言葉が出た。 「…はい…すみません…」 「…俺も言い過ぎたかもしれないけど… お前が傷つかなくてもいいところで傷ついてるように思えて…」  そこまで言うと、社長はぼんやりと、 「レコーディング期間だから、お前たちに環境は変えてほしくないんだけどな… 諒、お前、今夜は2人の愛の巣に帰れそうか? 」

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