592 / 1053
第12章の45
思ってもみなかった社長の剣幕に諒は目を見張り、絶句するばかりだった。
「…麻也だって生身の人間なんだ。前のバンドでは苦労したようだから、
おかしくなったり、弱くなった面もあったろうよ。
同じように、お前だって何か欠けた部分があるからアーティストなんてものをやってるんだろうさ。
その2人がせっかく純粋に愛し合ってんのに、
それを信じ合えないなんて、もったいないと思わないか? 」
客観的に見ても、麻也が自分を愛しているように見えると言われて、
少し安心した諒の口からは、素直な言葉が出た。
「…はい…すみません…」
「…俺も言い過ぎたかもしれないけど…
お前が傷つかなくてもいいところで傷ついてるように思えて…」
そこまで言うと、社長はぼんやりと、
「レコーディング期間だから、お前たちに環境は変えてほしくないんだけどな…
諒、お前、今夜は2人の愛の巣に帰れそうか? 」
ともだちにシェアしよう!