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第12章の49

 …何より、自分の嘘がバレて、紛糾したのかも… 一緒にいたのは女ではない、山口でもない、じゃあ誰なんだ、と…  もし、坂口の名前が出ていたら…でも怖くて誰にも訊けない… それならば、あの部長の名を出してしまえばよかったのだろうか…  諒とこの家にいても、結局何も変わらなかった。 そう麻也は自分を責めた。  結局は嘘から積み上げたような諒との日々だった。 あの、諒に告白された時、はっきりと理由を言って、自分はつきあうのを断るべきだったのだ。 (…でも…あんな穢らわしいことなんて、諒には死んでも知られたくない…) でも、諒の疑念はそこからくるもので… (…砂上の楼閣ってこのことか…) 涙が、あふれてきた。  号泣になってしまいそうで、麻也はベッドから出ると、急いで玄関の外に出た。    11月の夜風は冷たい。    でも、こんな姿、諒には知られたくなかった。

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