600 / 1053
第12章の53
…と、2人に玄関の中に入れてもらったところで、麻也は倒れ込んでしまった。
フローリングの床が気持ちいい…
「大丈夫ですか、麻也さん…」
須藤に助け起こされる。
その横を鈴木がすり抜け、リビングに入っていく。
話し声がするということは、諒もまだいたのだろう。
鈴木は出てくると、
「諒さんもひどい熱で、風邪っぽいです…」
「じゃあ、2人とも、病院へ、ね、麻也さん、行きましょう…」
思いがけない展開だったが、皮肉にも麻也は人のあたたかさが嬉しくなって、
涙があふれるのを止められなくなった。
鈴木が引っ張り出してきた、諒の厚手の黒のガウンをパジャマの上から着せられると、
麻也は諒と2人、須藤の車に乗せられ、事務所提携の病院に向かった。
後部座席に乗せられた2人はもうふらふらで…
隣りあっているお互いの顔を見る余裕はなく…
しかし、紫のガウンの諒は、前を見たまま、
こてっ、と頭を、麻也の頭に預けてきた…
ともだちにシェアしよう!