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第12章の54

そして右手を、麻也の左手にそっと重ねてきた。 「麻也さんごめん。風邪、うつしちゃって…」 と言うなり咳き込み始めた諒の背を、麻也はさすることもできなかった。 が、しかし、咳がおさまると、諒は前を向いたまま、 「麻也さん、看護プレイてきるね…」 バカバカしいが、いつもらしくて、麻也はまた涙がこみ上げてくるのを感じた。 それをこらえながら、だるい頭の中で、諒はどうやって昨日までの騒ぎを消化したのだろうとも思った。 しかし… (またウソの上の楼閣に、諒との日々を重ねていくのか…) 後ろめたかった。 でもやっぱり… 諒から離れたくない… (いつか埋め合わせするから、諒、許して…) 麻也はぎゅっと、諒の手を握り返した…

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