612 / 1053
第12章の65
午後を回ると、普通食になったこともあってか、諒はかなり元気になっていて、
看護婦さんの目を盗んでは、麻也のベッドに入ってきていた。
諒は優しくキスをし、包み込むように抱きしめてくれるので、
麻也は嬉しいが、諒の回復が心配になる。
だから、諒を抱きしめる腕に弱々しくも力を込め、キスを返しながらも、
「…これって…ピンポンみたいに、風邪を延々と移しあうことにならないのかな…」
「同じ菌で、同じ薬で一気に治ってるんじゃない? 」
と、諒が楽観的なことを言うので、もうそれ以上は考えないことにした。
男2人にベッドは狭かったが、諒のぬくもりに麻也は幸せを感じていた。
すると諒はさらに優しく、
「麻也さん、無理しなくていいよ。もう、麻也さんの愛は十分に俺に伝わってるから…」
独占欲の強い諒に、珍しく満足げにそう言われると、麻也は安心して体の力ががっくりと抜けてしまった。
「麻也さん、おひるねしてていいよ。俺ずっとこうしてるから…
って、気になってたんだけど…麻也さんこのパジャマどうしたの? 」
諒の素直な表情に、麻也はあの悲しい夜を思い出し、言葉を失い、涙がこみあげてきて困った…
「…諒が…これ着ろって…」
「えっ?… 」
ともだちにシェアしよう!