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第12章の66

「…諒、あの日ベッドにこのパジャマ置いてたんだよ。 俺がおふくろからもらったヤツ…」 「え…俺、お揃いのヤツ置いたはずなのに…ま、麻也さん、何で泣くの…」 諒はただただ驚いていた。 「…とにかく俺と一緒にいたくないんだなって…ソファに寝て…」 麻也を必死でかき抱くと、諒は麻也の後ろ頭を撫でながら、 「ああん、麻也さんてば違うんだよ。風邪っぽかったのがどんどん悪くなってくから、 麻也さんにうつさないようにソファで寝てただけなんだよ…」 具合悪くて急いでたから、適当にパジャマも出したと思うし… 誤解されることばかり、ごめんね…と諒は一生懸命謝ってくる。 「…それで悲しくて外に出て、風邪ひいちゃったの? 」 甘やかすような諒の問いに…麻也は目を伏せたまま、うん、と答えるしかなかった。 「ほんとにごめんなさい。俺のこの風邪も…やっぱ、前の日、 麻也さんの制止をきかなかったからだと思うし…」 そして、2人の間に流れる微妙な空気は、もともとの原因のいさかいを思い出したから… 「…今回のことは、すべて俺が変なヤキモチを焼いたのが悪いから… 麻也さん許して。どこへも行かないで。」 …いつも同じ展開。 本当のことが話せれば、諒にいらぬ嫉妬をさせることはなくなるだろうが… でも、永遠に、諒を失ってしまうだろう…

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