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第12章の71
…須藤たちが帰ったあと、麻也は、「諒と2人だけの空気」にしたくて、
ちょっと換気がしたかったのだが、寒い日だったのでやめた。
その代わり、と麻也はソファの横に何日も置き去りになっていた仕事用のバッグの中から、
麻也はデオドラントスプレーを取り出して、空中に2,3回プッシュした…
…と、視線を感じて振り向くと、
さっきとは打って変わった諒の…冷ややかに見えた表情は一瞬で、慌てて目が泳いだものになった。
「あれ? マズかった? 」
気づかないふりをして麻也が尋ねると、諒は、ううん、と首を横に振った。
もらったパジャマのまま、ようやくベッドにもぐりこむと、麻也はあることに気づいた。
「ごめんね、諒…」
「え? どうしたの? 」
「デオドラントは空気じゃなくて、自分にすればよかった。あはは…」
すると諒は優しい微笑みで、ぷにっ、と優しく麻也のほっぺをつまみ、
「どうして? 俺、麻也さんの匂い、大好きなのに…」
「ちょっと、離してよぉ…」
面白がって笑う諒に麻也は、
「こんな明るい時間に2人でこうしていられるのって本当にゼイタクだね…」
と、頬を解放されたので、毛布の中にもぐりこんだ。
「そうだね…って、麻也さんっ、何やって…」
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