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第12章の84

 手配してもらったスタジオで、鈴木とローディーのケンに控えてもらってではあったけれど、 麻也は久しぶりに思う存分ギターと向かい合うことができて、満足だった。 <大満足>にならないのは、ギター以外の検討しなくてはならないことが、 時折ちらちらと頭をよぎるからで… 休憩の時、3人でココアを飲みながら、それが嫌になった麻也は楽しいことを考えようとした… 「…あっ…」 「麻也さん、どうかしましたか? 」 何か不手際があったのかと言うように、あわたて鈴木が尋ねてくる。 「…いや、そういえば俺、トレードマークみたいなレスポール、欲しいかも…」 「そうですね。ファンも喜びますよね。」 一緒に音をみていたケンもそう言う。 「時間ないから、これから恭一の店に行っちゃおうかなあ…」 鈴木はスケジュール帳をめくり、 「そうですね。明日からは予定びっしりだし…」 「…じゃあ、残り2時間しかないけど頑張る…」

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