640 / 1053

第12章の93

「ほんとだよ。恭一、どうしちゃったの? 」 麻也が声をかけてやっと、恭一は声を詰まらせながらも、 「…いやあ、麻也が…麻也も…出世したなあって思って…」 「何だよー、こっちまで照れ…ちゃう…」 …といつしか麻也まで涙…が… どうにか、 「…恭一のカレーの方が美味しかったよ…」 「…んなわけないだろ…」 と、2人は、おしぼりで目をぬぐっている。 だが、麻也は頭の片隅で、MA-YA時代のことにもっと触れられることを恐れた。 それで、この話題を終わらせようと思った。 「…恭一がいてくれたから、俺たちここまで来られたんじゃん… ほんとにありがとう…」 「…こちらこそ、売り上げに貢献してくれて、ありがとう…」 と、恭一が冗談ぽく紛らせ、みんなも笑顔になったところで、恭一はまた箸を取り上げた。 みんなも箸を止め、須藤あたりはもらい泣きをし、諒まで嫉妬を忘れたかのようにうるうるしていたが、 「さあ、またレコーディングに備えて、スタミナつけましょう! 」 と、麻也が明るく声をかけて、食事会は再び始まった…

ともだちにシェアしよう!