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第12章の97
「えっ?…」
「麻也さんは俺だけのものなんだよ…」
そう言って見つめてくる諒の瞳には、切実なものがあった。
「何をいまさら、当然なことを…」
麻也は諒を安心させたくて、諒に微笑みかけ、自分からも抱き締め、
ぽんぽんぽん、と手で諒の背を、あやすように叩いてやった。
「…諒が俺だけのものと同じように、俺も諒だけのものだよ。
お互い浮気していいのは…」
びくっ、と諒の体が反応したので、あわてて続けた。
「…浮気が許されるのは、ステージの上だけ。
相手は観客。」
「あ、ああ、そういうことね…」
諒はほっとしたような表情で、麻也に密着するように横たわる。
「…それは俺たちの宿命、ってか、選んだ道じゃん。
ついてきてくれたファンはありがたくて可愛いから、
愛は返しちゃうよね…」
「うん…」
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