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第12章の98
「でも、それこそ娼婦と同じで、自分もイったら負け。
満足して惚れたらバンドの成長は止まっちゃう。
もっともっと他の人までホレさせてナンボの商売だよね。」
麻也自身の耳にも、その言葉は予想より冷たく響いてびっくりしたし、
諒にも同じように聞こえたようだ。
それに、自分たちがいつも嫌がっている「アイドル視」とか、
意地悪なオジサンたちに言われる「ロックだか何だか知らないが、とにかくゲーノー人はまともじゃない」を、
諒に思い出させてしまったようで、麻也は少し後悔した。
が、諒は、
「そっか、だから…」
「ん? 」
「いやあ、いいです…」
と、言葉をためらう。
「何だよー、気になる~」
麻也は諒の肩を掴んで、揺さぶった。
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