652 / 1053
第13章<壊れそうな愛>の1
「明日エステだかマッサージだかがあるのぉ~? 」
レコーディングスタジオの控室、遅い食事の時間に諒は大声をあげた。
ハードスケジュールで、特に麻也から疲れの表情が消えないので、
社長たちが考え出したのが、顔まわりも癒してくれる整体を、
メンバー全員に受けさせることだった。
「だったら睡眠時間増やした方がいいと思うけど…」
諒が言い募るのに、麻也はうつむいたまま済まなそうに謝った。
「ごめんね、俺が年寄りなばっかりに…」
「26歳で何が年寄りだよ。それより諒、お前が兄貴を寝かせてないんじゃねーの? 」
「俺も思った。あと、須藤さんから圧力とかかけられないの?
あのアイドルバンドの仕事、いい加減に切り上げるとか…」
リズム隊に言われて、頬を赤らめた諒をにらみながら、須藤は、
「麻也さんも諒くんには甘いんじゃないですか…」
「…いやあ、バンドの看板の福利厚生で…」
「福利厚生!? 麻也さん俺のことをそんな目でしか…」
須藤が咳ばらいをし、
「とにかく! 睡眠も大事ですが、体のゆがみも整えないと。
ジム通いの時間が取れないんで、せめて整体なんです。
高い演奏能力と、ルックスの良さの奇跡のマリアージュ!
それがディスグラなんですから! …あ、すみません、電話…」
廊下に出て行った須藤が残していった熱弁に、メンバー全員、複雑な表情を浮かべていた。
ともだちにシェアしよう!