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第13章の3

 移動の車の中の時間も、鈴木の横で、また麻也は考え込んでしまう。  麻也自身、大きな事務所に入ったことはあっても、 これほど多くの人脈とつながったことはなかったから、 いくらメンバーやスタッフと気を付けあっても、 思いも寄らなかった誹謗中傷が聞こえてくる。  真面目に音楽に取り組んでいるバンドとはいえ、まだメンバーはみんな若かった。 それとあいまって、一番背の低い麻也でも174センチの、 高身長でプロポーションも顔立ちも整ったメンバーは、 ロックらしいいでたちでも、アイドル視されることも多い。 それも悪いのか、妬みも聞こえてくるわけで… (何で諒が業界のドンの愛人だよ。諒と俺が、エラい人と寝て、 ヒットチャートを買った、だよ…) 確かに諒も自分も性別を問わず、おエラい人からも誘いを受けるのは事実だが… 周囲はみんな守ってくれている。 …特に、諒… 諒のぬくもりが恋しくなる… 悔しさに麻也が唇を噛んでいると、鈴木が雰囲気を変えるように、 「そういえば、諒さんと麻也さん、また雑誌の仕事が入ったんですよ…」 麻也はどうにかおどけて鈴木の肩に頭を預けた。 用意される仕事の量は、キャパシティをもうとっくに越えている… でも、不遇だった頃が忘れられない麻也は、ため息をつくこともできるだけ自粛している… 「…ん、もう、諒さんに怒られますからやめてください。で、仕事は…」

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