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第13章の8
「…おはようございます…」
「あー、本物の麻也さんだ! 」
スタジオの控室に入ると、アシスタントエンジニアの女性が声をあげた。
「えっ? 」
麻也が怪訝そうな顔をすると、彼女は麻也と鈴木に近づき、小声で、
「さっき、麻也さんのいい香りが漂ってきたんで、
待ち構えてた山口さんが書類から顔を上げたら、冬弥くんで…」
麻也はひっくり返りそうになった…
「…同じ香り…? 」
ぼう然と麻也がつぶやくと、鈴木が、
「ファンクラブの会報にも載せたような気がしますねえ…
あと、インタビューとか、ラジオでの質問コーナーとか…」
ずっと愛用してきた、シャネルのエゴイスト・プラチナムが…
(そういや諒も俺の香りになりたいって、使い始めたんだった…)
せっかくの2人の香りなら、公開すべきではなかったのかもしれない…
いや、よく考えれば、「ファンに真似される」のはかまわない。女性ファンでも。
冬弥なのが問題なのだ。
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