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第13章の9
結局、麻也は、山口に打ち合わせで捕まる前に例のデオドラントスプレーを、
その場で全身にかけまくった。
冬弥がここにやってくればいいな、と思いながら。
でも、オードトワレ無しは本当に諒とのデートでも嫌なので(もちろん諒は無しの方も喜ぶが)、
鈴木のダンヒルを借りようと思ったのだが、
「諒さんに殺されたくない…」
と激しく抵抗したので、仕方なく、事務所のスタッフに電話して買ってきてもらうことにした。
急だったので、シャネルの「エゴイスト」の方しか思いつかなかったが…
そんなところに、学校帰りなのか、大きな黒のデイパックのポケットから辞書をはみ出させた、
私服の冬弥が入ってきた。
びっくりして、頬を赤らめるのが、可愛い…のか?
「ま、麻也さん、おはようございます…」
モノトーンの、ちょっとおしゃれなジャケットもシャツも、高校生には生意気なくらい高そうなもので、
麻也にはちょっと嫌味に映った。
が…
その襟元を見て、麻也は怒りにフリーズ…
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