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第13章の10
「麻也さん、どうしました? 」
鈴木が声をかけなかったら、そのまま自分はどうしていただろう…
目の前の冬弥の襟元に光っていたのは、麻也が肌身離さず身に着けている、
諒に贈られたドッグタグのペンダントを真似たものと似たペンダント…
さらに麻也の視界に入ってきたものは、冬弥の右手の小指のリングだった。
細かくは見る気もしなかった。
(どうしよう…)
麻也は気づいてしまった。
冬弥の熱意を、自分は本当に怖がっていることに。
それは…絶対にあの事件のせい…
アマチュアの頃はどんな男相手でも、撃退できていたのだから…
最近では、諒の存在に守られていたし、メンバーやスタッフ大勢といつも一緒だったから、
ぶつかってくる男はまずおらず…女の方は多かったが…ここでは鈴木がいない短い時間が不安だ…
(高校生なのに…初めて会った時より、コイツは真面目になってきているようなのに…
いや、ますます思いつめてるのか…? )
気持ちが整理できなくて、
「山口さんのコーヒー買ってくる。」
と言い置いて、麻也は控室を抜け出し、鈴木もついてきた。
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