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第13章の11

 …廊下の自販機の前に立っても、麻也の頭の中は混乱したままだった。  久しぶりに会った冬弥は、ロックというよりアイドルっぽさが勝っている雰囲気は相変わらずだが、 最初に会った時よりも成長して、落ち着いてきた感じだった。 飛び出ていた辞書…昔の自分のように「海外レコーディングを夢見て」英語だけは猛勉強しているとか、 ボーカルのトレーニングに力を入れているのかもしれない…  でも…  自分への思慕が続いているらしいのは、あのアクセサリーを見ればわかることだし…  …背後で鈴木も、自分に声をかけそびれているのが伝わってくる。 誤解されるのも嫌だったが、年下の男の子にビビッていると思われるのも癪にさわる… …それでも、本当に、ダメなのだ。 (冬弥、ごめん…仕事場の後輩としても…もう、ダメだよ…) …男のくせに、たかが未成年の横恋慕を、セクハラのように恐れる自分が嫌だ…  麻也はどうにか自販機の横にずれると、 「…鈴木さん、バッグ持っててくれる? 」 と頼み、まずは、安物とはいえ大事なペンダントを外し、それから… 外したことのない、諒とのペアリング… シルバーに、麻也を意味するダイヤと緑の瞳の諒のペリドットを配した、 右の小指のリングを外すと、黒のバッグの中から、香水の入った水色のポーチにしまい込んだ…

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