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第13章の15

 緊急なので、簡単なリハーサルのためにスタジオに入ると、 初めての番組ではあったけれど、スタッフたちの様子は冷ややかだった。 ―ルックスだけの若造が、急の出演じゃあねえ… ―こんなギラギラしたヤツが出るんじゃ、あの大先生も嫌がるわけだ… (こんな意地悪な雰囲気、久しぶりだな…) 苦笑する余裕が諒にはあった。 その一方で、優しく接してくれるディレクターももちろんおり、 諒がマイクテストで声を出したところで、諒の声の豊かさにみなびっくりしたらしく、 冷ややかな空気が少し変わった。  冷たかったディレクターが手のひらを返したように、 「メークはあまり濃くしないでくださいね。 色っぽ過ぎて視聴者がびっくりしますから。」 「大丈夫です。びっくりされるのには慣れてますから…」 営業用の、貼りついた笑顔でそう返したら、引かれてしまった…

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