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第13章の16

 本番になると、今回はトークの時間はもらえなかったので、 諒は心を込めて1曲だけをひたすら歌うだけだったが、 本人にも引けを取らない美しさと迫力に、立ち合った関係者はみな驚き、称賛した。 「パンクっぽい、っていうの? いつもあんな激しい曲をやっている人がねえ…」 「声の出てるコだとは思ったけど、聴かせるねえ… 上手い。伸びるねこれは…」 「ほんと、ルックスも恵まれてるんだよ。 背はあるし、手足は長いし、日本人離れしてるよねえ…」 「目がぱっちりしてるとこがデビッド・ボウイより好きかも…」 「女のコにモテるんだろうなあ…」 「それがさ、もう女は卒業して、バンドのギターとできてんの。 すっごく可愛いコ…男なんだけどね…」  今度はバンドで出てください、と言われて、 諒はほっとして、須藤と一緒に楽屋に引き上げた。

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