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第13章の19

 しかしどうにか諒は笑顔を作り、 「ごめんなさい。これからレコーディングの続きで… ボーカル録りなので、休めなくて…」 絶対に諦めさせたくて言ったのだが…この日の響子はいつもと違っていた。 「じゃあ、手短かに言うけど、麻也くんを何とかした方がいいと思うわよ。 あなたやバンドに傷がつくと思うもの。」 …思いもよらない言葉に、一瞬、諒のガードは途切れた。 「麻也くんは、最初があんな事務所だったから、この業界をナメてるのよ。 マンションだ、ポルシェだって買わせて、社長の気持ちを手玉に取って離婚までさせて。」 響子の言い方は<断言>だった。 これまで諒が地方でまで聞いてきた<~ってウワサよ>というレベルではない。 それに、離婚の話は初めてだった。 諒は言葉を失うだけだった。 「でも、みんなはそう言うけど、麻也さんの実家はすごい金持ちだし、そんなことしなくても…」 「…前のバンドを延命させるためよ。そのために抱かれてたのよ。あんなに綺麗な子だもの。 社長は彼が可愛くて何でも与えてた。 でも、麻也という人は、社長のいない間にマンションには女のコは連れ込むし、車の中では…」 その先は女性として、口にするのははばかられたらしい。 「…まあ、腹いせだったんでしょ。だから今でも、バンドの外ではそんな調子だし。」

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