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第13章の28

 あと、マンションやクルマをもらっても、いやいやの愛人生活とか… 何より麻也はあの時「初めて」だとは言わなかったのだ。 (俺より早く業界にいたんだから、オトコを知ってたって不思議はないし、 だとしても、俺のことはほんとに大事にしてくれるんだからいいじゃん…) …でも、もう、初めてじゃないのは仕方がないとしても、隠さないでほしかった。 そして、出てくる話はみな<相手は坂口社長>なのだから、それは確定なのだろう。 諒は会ったことも見たこともない男だが、噂では、業界のドンというわりには、 俳優ばりのいい男で…  そこで諒はまた嫌な考えにぶち当たってしまう。 (もし、<いやいや>じゃなかったら? 引き裂かれたとかだったら? 麻也さんの方が捨てられたとか…それで、麻也さんは坂口の息がかかったガキ共をもてあそんでるとか?  それはつまり…前の男が忘れられないから…)  俺みたいな若造じゃ、ドンには負けるもんなあ…諒はうんざりした。  しかし、諒は切実に思った。    すべてを知る神のような存在がこの世にいるのなら、真実を自分に教えてほしいと。  するとその時、ドライバーに抜け道を指示した須藤が、とんでもないことを言い出した。

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