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第13章の31
諒がスタジオに入ると、麻也は控室のテーブルで、
真樹と読み合わせをしていた。コーラスの再確認らしい。
また麻也に目を転じると、諒は、麻也の横顔がかなりやつれていることに気づいた。
家を出る時は気が付かなかったがこうして見てみると…
その体も、もともと線の細い男だが、いつも以上に細い…
そのせいでいつも以上にはかなげなたたずまいは、
現場だというのに、諒の心を激しく捉える…
あの話なんて絶対ウソだ。
今でも物陰で抱き締めて、自分の熱であたためてやりたい…
(抱き合う時もいつも時間はないから…麻也さんが寂しいとか、
気持ちが変化したのにも気づいてなかったかも…)
今夜は少し話して様子を見てみよう…そう諒が思った時、鈴木の携帯が鳴った。
山口さんから、と言われ、麻也は苦笑しながらその携帯を受け取る。
「…あー、12時、てっぺんですね…わかりました…10分くらい遅れるかも…申し訳ありません…」
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