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第13章の33
一人になってしまうと、やっぱりよくない。
肩回りを動かしながらも、様々なものが脳裏に浮かんでは消える…
自分だけのもののはずの、麻也のあの美しい裸身。
自分への思慕をじわじわと語ってくる女優の真紅の唇。
そして、自分への想いのために饒舌に嘘をつく、少女のようなピンクの唇。
そして、そして、顔も見たことがない、坂口とかいう業界のドンの一人。
そんなものが頭をよぎって、時間ばかりが過ぎていく。
(トラブルの時に限って、同性愛の曲なんだな、これが…)
イメージトレーニングも上手くまとまらない…
諒がレコーディングブースに移動しようと、部屋を出ると、
真樹と直人がラジオのために仕方なくスタジオを後にするところだった。
「ごめん、明日聴かせて…」
「こっちこそごめん。手間取って…」
そうなると、エンジニアたちももちろんいるが、
コントロールルームの中心に陣取るのはプロデューサーの麻也。
無機質なレコーディングブースの中で諒はひとり、マイクの前に立ち、
ヘッドホンから流れてくるモニター音源を聴きながら歌い始めた…
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