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第13章の38

 結局この日は決定打が出ず、いくつかの候補の中から、 翌日にみんなで選ぶことになった。  おおかたの作業を終えると、麻也は諒の耳元に、 「…先に寝てて。遅くなるかもしれないから。」 と囁くと、諒の返事も待たずにバッグを取り上げ…たところに、須藤が話しかけてきた。 「諒さんはこれからまっすぐ帰るんですよね? そしたらさっき話したベッド、早速持っていきますよ。」 これには諒も麻也も驚いたが、事務所のみんながどれだけ心配していたかがわかって、 すまなくなった。 申し訳なさそうに麻也が、 「遅いのに、いいの? 須藤さん…」 「ええ。その方がこっちも助かるんで。」 「じゃあ諒、悪いけど、俺の分も受け取っておいて。 須藤さんも鈴木さんもありがとう。社長にもとりあえずお礼をお願いします。 じゃあすみません、俺はこれで…」 と言い置くと、麻也は小走りでドアを出て行った… その背中を見て諒は、 (何だろう? 何かウキウキしてたみたい…) 響子の話が本当だったら、と諒の胸は痛む…

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