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第13章の39

 自宅に帰れば、諒は折り畳み式ベッドの受け取りだった。  完成形で来た2台と寝具を玄関に置いてもらったところで、何だか諒も疲れを感じた。  それでも鈴木と業者を見送ると、まずは麻也の分を麻也の仕事部屋の奥に設置し、 真新しい寝具もセットして、後は寝るばかりの状態にしておいた。 (ここまでしてソファで寝られたら、今日の俺はもう、自分でもどうなっちゃうか…) そう思いながら、諒は重い体をひきずって、自分のベッドを玄関に取りに行った…  …しかし、その夜も麻也の帰りは遅かった…  いつもならできるだけ待っている諒も、 レコーディング期間であることを口実に、さっさと寝てしまおうかとも思った。  が、麻也がバンドのために余計に仕事をしていることを思えば、 せめて起きて待っていてやりたいという、いつもの情がある。  そして…ストレートに訊けるわけはないが、今夜も浮気ではなかったのか、 チェックしたい…でも、これまでもやってきたけれど、 今夜ほど<クロ>と出ないか怖い夜はなかった… そして、麻也とケンカにでもなれば、麻也の過去…坂口との金とパワーの日々が懐かしいとか、 一介のボーカリストにしか過ぎない自分との暮らしは実はつまらなかったとか言われたら… 諒は気が気ではなかった。  

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