691 / 1053

第13章の40

 そんな思いを抱えて、諒はじっとしていることすらできなかった。 が、さすがに疲れているので、テストも兼ねて、新しいベッドに寝てみることにした… 寝心地は悪くはなかったが、やっぱり胸の中がもやもやして、すぐに起き上がってしまった。 それに、この部屋だと、麻也が帰って来た時にわからないし… (あー、もう、イライラする…)  それで、仕方なく、ピンクのパジャマ姿の諒はリビングで、 録りためていたテレビの美術番組を、心ここにあらずで眺めていた…  …キーの音、そしてドアの開く気配… (…あ…やっぱり洗面所だ…)  以前なら、ごめんごめんと言って、いの一番にリビングに走り込んできたものだが…  いつからか麻也はまず洗面所に駆け込んで、山口のタバコの匂いをスプレーで消している。 そもそもそれも怪しいかも… (まさか、あのガキのタバコじゃねえだろうな…) そんなことを思うと、出迎えるために立ち上がるのも面倒になった。  すると、いかにも疲れを隠して作った笑みの麻也が、ドアを開けて顔を出した。 「ごめんね諒、寝ててよかったのに…」 「ああ…じゃあ、悪いけど、先に横になってるわ。 場所あけとくから、麻也さんも寝室で寝てね。 もらったベッドはセットしたけどね…」 と、言いながら、どうして俺は甘いかな、と思った瞬間に、 諒は麻也の胸元の異変に気づいた。

ともだちにシェアしよう!