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第13章の49

「何でもいいよ。出かける準備しよう…」 と、諒から目をそらしたまま、麻也は言った。 諒は逆らわなかった。これ以上何か言えば、 取り返しのつかないことになってしまう気がしたからだ。  …とはいうものの、麻也の動作は休み休みで、 着替えを手伝う諒も何度も「今日は仕事休んだ方がいいんじゃない? 」と言ってしまうほどだった。 よっぽど諒は勝手に須藤にその電話をしようかと思ったくらいだ。 が、それに気づいてか麻也は、 「諒、先に行ってて。諒まで遅刻じゃ悪いから…」 「とんでもない。心配で置いていけないよ! 」 「いや、電話だけじゃ悪いから、諒、代わりに謝っておいて。」 「できないよ。俺たちは一心同体なのっ! 」 自然に出た言葉だった。 「一心同体か…」 麻也は苦笑し、床に置いてあったバッグを持って立ち上がろうとした… ところで、ごろん、と何かがじゅうたんの上に落ちた。 「麻也さん、これ…」 諒が拾い上げたのは…

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