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第13章の58

移動の時などにファンに手紙を無理やり渡され、 中身がファンレターというより、熱烈すぎるラブレターだった時だ。 本人の可愛いプリクラが貼ってあって、連絡先も書いてあって… みんな、マネージャーに渡してしまう。 麻也と諒が本当に恋人同士なのを信じていない人は多かったし、 真樹が彼女持ちというのは一部のファンのウワサと思われていた。 身内以外のみんなは、まだまだ若いメンバーは何のウワサもない直人のように、 人気維持のために決まった恋人は当分作らないものと、 思い込んでいるようなところがあった。 まあ、諒は須藤がうっかり口を滑らせて、 麻也が前のバンド時代のグルーピーと今の狂信的なファンに監視されていたらしいというのを聞いたこともあったが… 実害にあったことも、気配も感じてはいなかったので、 気にしないようにしていたのを忘れていた…  そんなことをぼんやりと考えていると、 須藤が、忘れていたとでもいうようにカバンから書類を取り出し、 赤いドアの方に行こうかどうしようか悩んでいるのが目に入った… 「諒、諒にはこの、ボルドーのスーツなんてどう? 」 「あ、カッコいいね。じゃあそれにしようかな…」 真樹の笑顔に少し癒された気がした。

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