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第13章の62
麻也が壁際にいた須藤に何かを話しかけ、須藤がうなずくと、
会場の真ん中を、少しよろよろしながらも、
人々の視線を浴びながら突っ切ってドアに向かっていくのが見えた。
きっともう家に帰るつもりなのだろう。
(俺に声かけてくれたっていいのに…)
諒は落ち込んでしまう。思えば今日は、麻也とはすき間風が吹いたままだ。
…と、複雑な気持ちで麻也の後ろ姿を見送ると…
「わぁっ! 何だよ真樹…」
いつしか貼りつくようにして真樹が隣に立っていたのだ。
さらにはよっぽどの秘密なのか、えらく近く、耳元に囁いてきた。
「兄貴、帰ったんだよね。」
「ああ、多分ね。」
「だったら諒、ナンパ付き合ってよ。」
「な、ナンパ? 」
麻也の弟から出る言葉とは思えずびっくりしたが、
あまりに懐かしい響きに嬉しくなる気持ちもあって…
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