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第13章の69

これには諒もまいってしまったが、どうにか優しい表情を作り、そっと彼女の右手を取って、 「通訳はいいけど、この手はだめでしょ。彼氏に怒られちゃうよ。」 と、極上の営業スマイルを見せた。 が、美咲は、 「彼氏はいないから大丈夫です。」 と言う。 (本当はあまり酔っていないのか? あぶないな…) と思った瞬間に、今度は手を握られ、何か紙を握らされていた。 「あのっ、もしよろしかったら、ご連絡下さい。」 ここは気を持たせてはいけないだろう。 「あー、でも、ウチ、奥さん怖いから…こういうの禁止なの。 だからこういう機会におしゃべりまでで、ね。」 「えっ? 諒さんって、再婚してるんですか? 」 美咲の顔色がみるみる青ざめたのを見て、 この短い時間にどれほど彼女の心に自分が入り込んでいたのかを思い知らされていた。 まあ、こんな商売なら当たり前、と冷静に考えれば気づくことなのだが、 直人のことにばかり気を取られ、警戒がおろそかになっていたなとちょっと反省する。 「あれ? 弟さんなら知ってるはずだよ。俺、ギターの麻也とそういう関係で、同棲してるの。 で、もう少ししたら入籍するの。」 言いながら、諒は本当はちょっと寂しくなっていた。 何らかの方法で籍を一緒にしたいのは本当だったが、ここのところの2人のことを考えると…

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