727 / 1053
第13章の76
諒は少しでも直人を励まそうと、
「でも、やっぱり志帆ちゃんの方がきちんとしてると思うよ。
あと、情報としてはさ…」
美咲と友美が志帆に距離を感じているという話をした。
「だから、志帆ちゃんと付き合っても、あの2人がくっついてくることはないんじゃないのかな…」
それを聞いても直人は浮かない顔だったが、真樹は、
「その方が助かるよ…それじゃ悪いけど、この辺で俺はあがります…
お疲れでした! …って、このことは兄貴にはナイショねっ! 」
「絶対だよっ! 」
諒は必死で、去っていく真樹の背中に叫んだ…
直人は気を取り直して小路を歩き始めると、
「俺も初めての店なんだけど…あ、諒、今日はアルコール…」
「パーティーで少し飲んじゃったから、軽く解禁しちゃうよ。今夜だけ…」
少し歩いただけで、目当ての隠れ家的なバーには着いた。
ラグジュアリーというより渋いおしゃれな内装のうえ、暗すぎない照明の落ち着いた店だが、
比較的若いカップルが何組かいたこともあり、2人ともすっかり気に入ってしまった。
「あ、なんか、デートにもいい感じのお店じゃない? 」
カウンター席に落ち着いて、諒が何気なく言うと、
女性客と目が合って<えっ? >という表情をされたという直人は、
「俺が麻也さんじゃないからびっくりされたのかなあ? 」
と笑い、諒も最近のつらいことは忘れて笑ってしまった。
「直人、ケータイに気を付けてた方がいいんじゃない? 」
久しぶりのビールが美味しい諒は、機嫌よく言ってしまったが…
「いやあ、いいよ。今日はもう。それよりさ、真樹がいないから安心して訊くけど、
諒、ここ数日調子悪いのは麻也さんと何かあったの? 」
ともだちにシェアしよう!