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第13章の77

 諒はすぐに現実に引き戻されたが…言葉に困った。 「あ…うん…わかる? 」 「…忙しすぎるよね、俺たち。諒と麻也さんは俺よりもっとだけどさ。 同じ部屋に住んでるのに諒と麻也さんがすれ違ってるのも心配だったのに、 いきなり諒のボーカルがおかしくなったっていうしさ。」 「…」 「すれ違いのせいで、2人の仲がおかしくなるのも嫌だし。 体験者としてはさ。」 「直人…」 そういえば、直人が前の彼女と別れた理由も、彼女から<すれ違いが耐えられない>と言われたからだと聞いていた。 「…でも、俺の場合はすれ違いだけじゃなかったよ…」 「えっ? 」 「…結局、この仕事への偏見、かな。ライブの後は酒と女だろうとか、 会えないのも、仕事とかいって浮気してるんじゃないかとか… 周りにもいろいろ言われてたみたい。実際、他のバンドではすごいところもあったってウワサだし…」 (どきっ…) …自分の麻也への不安は乙女レベルか…諒が動揺を隠そうとしていると、直人は瞳をのぞき込んできて、 「…もしかして、また誰かに何か言われたの? でも、麻也さんはどうせいつも通りなんでしょ? 」 「どうせ、ってのは何だよっ…」

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