732 / 1053

第13章の81

 しかし、麻也はかなり弱っているように見え、タクシーから降りると、 その男にしがみつくようなかたちになった。 (…あ…) その様子にはやましいものは全く感じられなかったのだが、 諒はいてもたってもいられなくなって、その後ろ姿に早足で近づいた。 「麻也さん! 」 「あ、諒…」 嬉しいことに、振り返った麻也は、諒に支えを求めてきた。 一緒に振り返った連れの男は一瞬びっくりした顔をしたが、 諒だとわかるとほっとした顔をした。 そして、やはり諒の知らない男だった。 「すみません。麻也がご迷惑をかけて…」 諒は麻也を片手で抱き寄せながらそう言い、麻也は、 「こちら、スナイカーズのギターの久保田くん…」 と紹介しながら、諒にしがみついてくる。 諒が口を開く前に、いかにも性格の良さそうな久保田はあわてて、 「俺が悪いんです。麻也さんが体調悪いのに気がつかなくて、 無理にお時間いただいてしまって…」

ともだちにシェアしよう!