733 / 1053

第13章の82

「いえいえ、このヒト、お世話になってる人のためなら何でも、なんですよ。 麻也とデビューアルバム作ってるバンドの方ですよね? 」 すると、久保田はどうしてか困ったような顔をして、ええ、とだけ答えた。 諒、悪いけど立て替えて、久保田くんのタクシー代… 麻也に囁かれて、諒はあわてて財布を取り出した。 止めたままのタクシーの横で久保田は遠慮したが、 「遠いから、お詫び。受け取って。」 麻也に可愛らしく言われると、久保田は諒から恐縮しつつ札を受け取った。 それから、麻也が心配だということになって3人で軽く挨拶を交わすと、 久保田は待たせていたタクシーに乗り込んで帰って行った…  そして、2人はマンションに入り、エレベーターに乗った… ところで、また嫌な現実に引き戻された。  …俺たち、冷戦中… (なんで早上がりしたのに、あいつと飲んでたんだよ…) 諒は麻也の顔の色を確認する気にもなれなかった。

ともだちにシェアしよう!