735 / 1053

第13章の84

そのひとことで、諒は麻也の横顔の儚げな色気のようなものに気づいて、 いつものような愛しさがこみあげてくるのを感じた。 それで、 「すぐあっためてあげるから、少し待って」 と答えたが、笑みを浮かべる余裕などはなかった。 それなのに麻也は向こうをむいたままつらそうに、 「諒、悪いけど、俺、今夜は…」 そんなつもりは全くなかった諒は、がっかりを通り越して怒りを覚えた。 いくら自分でも、そんなことするだろうか。 そりゃ、素肌のままの麻也を、自分も同じ姿であたためようとは思っていたけれど… 「当たり前じゃん! 誰がこんなに弱ってるアンタを抱くんだよ! 」 「それならいいけど…」 その言葉すら、今の諒の気にさわった。 「アナタが誰と遊んで疲れてるか知らないけど、 俺だってその気になればいくらでも遊び相手はいるんだからね!」 麻也は、聞きたくない、というように目を閉じ、ますます顔を背ける。

ともだちにシェアしよう!