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第13章の84
そのひとことで、諒は麻也の横顔の儚げな色気のようなものに気づいて、
いつものような愛しさがこみあげてくるのを感じた。
それで、
「すぐあっためてあげるから、少し待って」
と答えたが、笑みを浮かべる余裕などはなかった。
それなのに麻也は向こうをむいたままつらそうに、
「諒、悪いけど、俺、今夜は…」
そんなつもりは全くなかった諒は、がっかりを通り越して怒りを覚えた。
いくら自分でも、そんなことするだろうか。
そりゃ、素肌のままの麻也を、自分も同じ姿であたためようとは思っていたけれど…
「当たり前じゃん! 誰がこんなに弱ってるアンタを抱くんだよ! 」
「それならいいけど…」
その言葉すら、今の諒の気にさわった。
「アナタが誰と遊んで疲れてるか知らないけど、
俺だってその気になればいくらでも遊び相手はいるんだからね!」
麻也は、聞きたくない、というように目を閉じ、ますます顔を背ける。
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