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第13章の85
「アナタはいつもそう。
俺からはチヤホヤしか言われたくないのな。
可愛いですね、ステキですね、天使みたい、ってな。」
言いながら諒自身も傷ついていた。
最初にそうしたのは、自分。
でも、麻也はあんな不審なことをしなければ、
プライベートの時間のこのファンタジーは平和に続いて…いた…
(いや…それも、麻也さんの秘密のせいだ…)
諒も耐えられなくなった。
しかしその時、諒の視界に入ってきたのは、
自分がさっきハンガーにかけた、ボルドー色のジャケットだった。
また明日の朝になれば、自分たちはまた、
若手では一番の、ロック界の大人気のバンドのメンバーとして、
ヒットに向けたレコーディングやインタビューをこなさなくてはならないだろう…
そんな2人が、ツアーも控えているのに、
気まずいままでいいはずがない。
恋愛が原因ならばなおのことだ。
…なんて、そんな風にでも思うしかない。
今夜はそれで寝よう。明日のために。
いや、浮気をやめて、と言えばいいのか?
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