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第34話
今自分がどういう状態なのか、泉はまったくわからなかった。
ひたすらに頭の中が熱い、身体が熱い、暑い。汗ばんでいるのがわかる。頭の中が煮えたぎってるようにぐつぐつしてるような感じで、頬がどれだけ赤いのだろうというくらいに火照っている。
「ン……っ」
ぐちゅぐちゅ、と微かな水音が脚の間からしていた。その音に慣れることはなく羞恥にかられる一方で、泉はシーツにしがみついてはしたない声が出そうになるのを我慢する。
音には慣れない。なのにそれを発生させている指の動きには慣れつつあって、初めて指を咥えこんでいるのに言いようのない刺激を生んで後孔から腰へ、背筋へ、脳へと淫らな疼き駆け上がっていく。
「だいぶほぐれてきたね。もうちょいかな」
涼介は声をかけてくるが、泉にはもうずっとまともに返事もできない状況だった。
「指、三本入ってるのわかる?」
シーツに顔を埋めた状態で泉はかけられた言葉に後孔を意識してしまう。
ばらばらと動く三本の指。内壁を広げるようにゆっくりと擦り上げる動き。
生々しいそのすべての感触がまた一層羞恥とわけのわからない快感をともなって混乱しては喘いでしまう。
「りょ、涼介さん……」
下手に声を出したら甲高い声が出そうで、泉は慎重にそっとその名を呼ぶ。
「なに?」
「……」
呼びはしたものの、なんだっけ、と思考が働かずに絶え間なく続く快感に唇を噛み締めた。
「もう、いい、とか?」
突然、指が引き抜かれた。じわじわとした疼きは残ったまま、喪失感が広がる。
あったものがなくなった。もともとなにもなかったのに、充分に涼介の指に慣らされた身体が喪失感に戸惑う。
「……もう……」
そう、もう、いい。
頭の片隅で頷く自分がいる。同時にーー……何か迷っている自分がいる。
自分の気持ちにさえ惑わされて快感の残滓に浸っていると腕をつかまれた。そのまま身体を反転させられる。
あっと思った瞬間、脚を抱えられてその間へ密着してきた涼介と目があった。
「もう、挿れて、いい?」
太く硬いものが緩んだ後孔へ擦り付けられた。
向けられる眼差しの色欲の深さに、泉の心臓が激しく動いた。
「い、いれ……!?」
「て?」
「ち、ちがっ! うわっ」
ナニをドコに?
頭の中が爆発するような衝撃に思わず叫んだ。同時にぬるぬると擦りつけられる熱い感触に思わず視線を向けてしまう。勃ったままの自分の半身が目に入る。後孔の状態は陰になって見えないが、間違いなく押し付けられてるのは涼介の半身だ。
呆然とする泉に、ふっと口角を上げた涼介が孔から蟻と戸渡りを欲棒でなぞってくる。そのまま前へと来て泉の半身にこすりつけて、また下へと降りていく。
「オトコってさー、ダメな生き物だよね?」
泉の後孔にぬるゆると擦りつけられる先端。その感触に内腿が震える。
肘を立て少しだけ上半身を起こして涼介を見ると涼介は手を伸ばしシーツの上に置いてあった小さなパッケージを取り開封した。
「ちょっとだけ、と思っててもさ、すぐ我慢できなくなるよね?」
涼介がなにをしてるのか、数秒して気づいた。涼介の半身に何かをつけてーーと考えればそれは答えは一つ。
すぐにまたさっきまでとは違う感触が後孔にあてがわれた。滑りは散々涼介がローションで濡らしていたおかげであるが、皮膚に触れるソレがさっきまでとは違う。泉が使ったことも手にしたこともないゴムの感触。
さっきまでの生々しさとはまた違う生々しさに泉は何度も目をしばたたかせる。
「りょ……」
ぐっと腰を持ち上げられ涼介の半身が、その先端が、力を持って後孔を押し広げてきた。ほんの少しだけ、だけれどハッキリとした圧迫感に息を飲む。
「最後までシていい?」
「……さ……」
最後、とは。
呆ける泉に涼介が熱を帯びた笑みを浮かべまた少し腰を押しつけてきた。
「最初は苦しいかもしれないけど、すぐ慣れて気持ちよくなれるから。泉くんなら、大丈夫。俺の指、気持ち悪くなかったよね?」
「……え、え」
「それに最後までって言ったってここまでシて、入れる入れないなんて今さらって気しない? 充分気持ちよくなって、もっと気持ちよくなろうよ、っていうだけだし」
「……」
確かに今さらと言えば今さらなのだろうか?
余裕ゼロの泉に反論することができるはずもなくて無意味に口をパクパクとさせている。
「それにただえっちしたいわけじゃなくて、泉くんだから、だよ? 俺、泉くんのこと気に入ってるから」
ね?、と涼介が泉の手を取ると指先にキスをしてきた。
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