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第35話
ちゅ、と手の甲にも唇を押し当てた涼介は泉の膝裏を抱え直して身体を前のめりにさせる。同時にまた少し先端が挿ってきて泉は喉の奥で短い悲鳴を上げた。
「俺と泉くんは友達で、でも同性愛者で……。普通なら考えられないかもしれないけど、俺は全然アリだと思うよ。だって身体の相性ってのもあるし。それに気持ちいいことスルの悪いことじゃないよね? お互いフリーだから」
「……っ、ん」
こじ開けられるような感覚。皮膚が突っ張って硬い涼介のモノが後孔のほんの少しの中を擦ってくる。
痛い、というより苦しい。
まだ先端だけのはずなのに想像以上の圧迫感に息を喘がせて泉はシーツを握りしめる。
「りょ……うすけさんっ……ムリ……っ」
絶対入らない、無理。
涼介が言った言葉は素直に頷けるものではないが、正直それどころじゃなかった。
「くるしっ、挿んないって……」
現在進行形のこの行為を肯定否定するよりもまず無理と涼介の半身が体内へ挿ろうとしている事実に首を振る。
実際さっきまでは昂っていた泉の半身は力を失っていた。
「わかった」
目を潤ませていた泉はあっさりとした声が聞こえてきて目をしばたたかせた。
わかった、って?
納得したのだろうか?
戸惑うが実際涼介の動きは止まった。まだ先端が挿入されたままだがそれ以上は進もうとしてこない。抜かれてはいないもののひとまず安堵の吐息がこぼれた。
「俺も初めてヤったとき痛かったから気持ちわかるよ。俺の場合は相手も初体験だったからさ。お互い知識はあるけど経験なくて手探りな感じだったしなぁ」
苦笑してみせる涼介に彼にも初めてのときがあったんだと当たり前のことを知って、そしてやっぱり痛いんだ、と納得した。
女の子だって初めてのときはものすごく痛い、という話を聞いたことがある。
男女で比べるべきものじゃないとわかってはいるが、排泄器官で受け入れるのを考えるとすんなりスムーズにいくはずもないし痛くないわけがない。
AVは所詮作り物というが泉がチラリと見てしまったゲイビデオのサンプルの男優もやっぱり演技で実際痛かったんだろうか。
いやでも前立腺……って……。
いまだに泉の後孔には涼介のモノがハマっているというのに侵入が止まって気が緩んだのかそんなことを考えてしまっていた。
「だから、安心して? 俺そこそこ経験があるから、ちゃんと気持ちよくしてあげるね?」
「はぁ……? へっ……、ンっ!」
泉のモノが掴まれ優しく扱かれ始めた。同時にハマっていたものが少し動いて抜けかけた。だがすぐに戻ってくる。ほんの数センチを小刻みに出し入れを繰り返される。
「涼介さ、んっ?!」
わかったって言ったよな!?
焦るように見つめるが涼介は余裕の表情で口角を上げ、絶妙な力加減で泉の半身が再び芯をもつように刺激を送り続けてくる。
後への違和感はある。だが挿入されているといってほんの先っぽだけだ。押し広げられている感覚はあれども刺激は半身へ送られるほうが勝っていた。涼介の指先が絡みついて、さっきまで垂れ流していた先走りで濡らすようにすべりよく上下されるとじわじわと再び熱が集まってくる。首をもたげる泉の半身をさらに硬くするように動く指が鈴口や竿、そして膨らみへと滑っていきすべてに刺激を加えていく。
「ひっ、あっ」
涼介の言うそこそこの経験値をあわらすような手淫に泉はこの短時間に何度も引き込まれていった快感の渦に飲み込まれていく。
「もっと気持ちよくなれるよ」
熱を帯びた吐息混じりに涼介は艶っぽく笑い泉の半身を擦りあげながら小さく腰を揺らす。
「――……っ、んっ、もっ」
十分、否応なく感じさせられているのに、もっと、なんてあるのか。確かにこれ以上続けられればまた射精してしまうのはどうしようもないことだと少し考えればわかる。
「そろそろ、かな……っと」
ぐっ、と不意に後孔に感じる圧迫感が増した。ずっと抜けきることはなく小さく動いていたのはわかっている。前を弄られているうちに半減していた違和感。馴染みかけていたそこがまたすこし押し広げられた。ほんの、少し涼介のモノが進んできた。
半身への刺激に身体が侵されているせいか強い圧迫感はよみがえってきたものの挿れられはじめたときの激しい抵抗感はない。
後ろへの違和感を忘れさせるように涼介の手の動きが早くなる。それに意識を取られてたが、しばらくしてびくりと泉は身体を震わせた。
「ひゃ……っ!?」
じわじわと侵入してきていた涼介の半身。それがまた一旦止まり、緩く抜き差しをしはじめた。
そこで、なにか圧迫感とは違うものを感じたのだ。ぞわぞわと苦しさに紛れた疼くような妙な感覚。
「指第二関節分くらいは挿ったし、ちょうど、くらいかな?」
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