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見えない傷

翌日から千夏は放課後にやってきた 「ねぇねぇハル君、友達ってこういうのやるって聞いたんだけど」 そういって取り出したのは、チョコがついた棒状のお菓子だった 俺は咄嗟に頭に浮かんだ遊びじゃなかろうかと、あえて聞いた 「何?何を考えてんの?」 「ポッキーゲーム」 安直なその答えに心底呆れて、溜め息をつく。 馬鹿だ、こいつは本物の馬鹿だ 「だよなぁ、何お前そんなのどこで調べてくるわけ?」 「落ちてた雑誌?」 何故疑問系なんだ、拾ったのはお前だろ 「そんなの拾うなよ、こういうのはシェアすんの」 開けられた袋から一本取り出し、口に入れた それをじっと見ていた千夏が、目をキラキラさせてふわっと笑った 「えへへ、美味しい」 太陽のような笑みに釣られてこっちも笑いがこみ上げる 「えっ、どうしたの?」 「んー、お前これしきの事で嬉しいんだなって、ほらもう一本くれよ」 「えっ、うん」 すると千夏はまた目を輝かせてお菓子を差し出した 菓子を頬張りながらずっと気になっていた疑問をぶつけてみた 「なぁ、お前ってなんでカーディガンなわけ? 今蝉が啼くほど暑い夏だぞ」 千夏は一瞬視線を反らしたがすぐに笑みを浮かべる。 「ねぇ!僕のこと抱きしめてくれないかな?」 「はぁ?」 あまりに唐突で脈絡のないお願いだった、ずいっと顔を寄せてきてそれを本当に望んでいる幼い子供のようだ 彼は恥ずかしそうに眉を潜めて続けた 「僕、誰にも抱きしめてもらえたことないから。僕が泣いても皆殴るばかりで」 「あー、ほら」 そんなことを聞かされて何もしてやらない訳にはいかなくて、大きく両手を広げた すると、千夏はまた目を輝かせて迷わず胸に飛び込んできた その様子に他人に復讐を考える程、闇を抱えた奴には見えなくてこんな純粋な奴にそこまででの傷を抱え込ませる彼の環境に少し同情して腕に力をこめた 身長はそう変わらない筈なのにその肩はあまりにも小さくて、胸が痛い 「骨と皮ばっかだな、飯食ってんのか?」 「えへへ、ねぇこれからもこれして欲しいな。」 「…まぁ暇だし良いよ」 「君って良い人だよね…復讐とか考えたくなくなる…く…」 「はっ?お前ここで寝んなよ…」 時すでに千夏は俺の腕の中で寝息を立てていた どかそうかと思ったが、なんとなくそれは出来なくてそっと頭を撫でた。 「ゆっくり眠りな」

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