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第二章 † ①持ち前の運動神経を試されるとき。

 街灯は数キロ離れたそこにぽつんと佇むそれのみ。なだらかな坂道は人通りが少なく、ほんの少し道を外れると鬱蒼と茂った木々が広がっている。  樹海。まさにそう呼ぶに相応しい。  ここは今年に入って初めて白骨遺体が発見された現場だ。  今夜は新月だ。薄暗い闇夜でカルヴィンの視界を助けてくれるのは、頭上に広がる藍色の空に散りばめられた星々の瞬きと、手にしている懐中電灯の明かりのみ。  視界はすこぶる悪い。  特別捜査部カルヴィンは犯人の足取りを掴むべく、夜の巡回と併せて遺体の発見現場に赴いた。  周囲は薄暗い上に右側には樹海が広がり、前方には短いトンネルがある。  どう見ても心霊スポットのようなそこは怖くないと言えば嘘になる。  だからカルヴィンの足はずっしりと重く、小刻みに震える。  けれども怖じ気づいてばかりはいられない。姉の件も含め、連続白骨遺体の謎を究明するためだ。  カルヴィンは自分を奮い立たせ、へっぴり腰になりながらも慎重に進んでいく。  自慢にもならないが、カルヴィンは運動能力も反射神経も人並みである。加えて体格も細身で力もそこそこだ。責任感や義務感は人一倍あるものの、それだけでは刑事の仕事はこなせない。  そしてカルヴィンは持ち前の運動神経を発揮した。  強張ったその足が小石に取られてしまったのだ。華奢な躰は危機感を帯びた悲鳴と共に夜の樹海へと吸い込まれていく。  躰のあちこちを打ち付けながら落ち続け、視界が開けたその地でようやく止まった。

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